なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 何しろ初めての恋なのである。


 自分の中に芽生えた制御不能の感情は、暴れ馬のように朱熹を翻弄する。


 会いたいと素直に言うことができないし、伝える手段も思いつかない。


 悶々と苦悩する日々を過ごしていると、突然曙光から贈り物が届いた。


 今香は、満面の笑みで曙光からの贈り物を朱熹に渡す。


『最近訪れがないから飽きられてしまったのかと心配だったけれど、ちゃんと気にかけてもらえているのね』


 今香の心の声が聴こえてきて、苦笑いを浮かべる。


 最近の今香は不機嫌だった。


 陛下の訪れがなくなり、後宮内で朱熹が中傷されていることが原因だ。


 心の声が聴こえていなければ、今香は朱熹のことを同情して中傷に怒っているのだと思うところだが、本音はそうではなかった。
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