なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 朱熹は喜び勇んで庭に出て、曙光へ送る花は何がいいかとあれこれ考える。


 曙光のことを思い、悩む時間も楽しくて仕方がない。


 最初の椿とは違い、今度はたっぷり時間をかけて選んだ。


 選んだのは、一輪挿しに適している桃色のガーベラだった。


 単純に庭に咲いていた綺麗な花を包んで送る。


 花言葉とか深い意味はあまり考えず、綺麗な花が咲いていたから摘んでみた、そんな軽い気持ちの方が重くなりすぎずにいいかなと思った。


〈今日の空は、あなたがくれた包み紙のように綺麗な色ですね〉


 一文を書き、そっと花に添える。


 会えなくても、心は満たされていた。


 けれど、会いたい気持ちは膨らんでいく。


 初めて抱える感情に振り回されながらも、それすらも楽しく幸せだった。
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