なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 名誉や財産で動くタイプではないので、きっと自由を求めて元の生活に戻ると確信していた。


 それなのに、自分の側にいたい、だと?


「どうして……」


 曙光は唖然として、つい思ったままを口にする。


 どうしてと言われ、困ったのは朱熹だった。


 答えはあまりにも簡単だった。


 曙光が好きだからだ。


 彼を支え、守っていきたい。


 自分にできることがあれば役に立ちたい。


 先祖がなぜ突然姿を消したのかは分からない。


 曙光が言う通り、皇族に嫌気がさしたのかもしれない。


 それでも、それは先祖の気持ちであって、朱熹の気持ちとは関係のないものだ。


 曙光は、天江国の皇帝として誇るべき人柄だと朱熹は確信している。


 だから、曙光の役に立つことに能力を使うことが悪いことだとは思えないのだ。
< 217 / 303 >

この作品をシェア

pagetop