なりゆき皇妃の異世界後宮物語
朝廷に向かう道すがら、朱熹は林冲の穏やかな笑顔を思い出していた。


 九卿という高い役職にありながら、どこか抜けているところやのんびりとした性格。


 心の声が筒抜けで、いつも面白いことを心の中で呟いていて、朱熹は笑いを堪えるのに必死だった。


 だがそれは意図して朱熹に聴かせるための心の呟きだった。


 曙光からそれを聞かされた時は、騙されていたと思って傷付いた。


 けれど、今思うと、あれは林冲の優しさだった。


 朱熹の心を和ませるための気遣いだった。


 曙光を襲った時に聴こえた、心の奥底から湧き上がる強烈な思いが、心の声となって朱熹の胸に響くように届いた。


『守らなければ』


 林冲は、家族を守るために必死だった。
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