なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「それがさ、至急お前に会いたいっていう子がいてさ……」


「曙光様! 朱熹です!」


 秦明の説明を遮って朱熹が声を上げた。


 すると、すぐにドアが開いた。


「どうして……」


 ドアを開けた曙光は、まるで狐につままれたような顔で、ここにいるはずのない朱熹を見つめた。


「曙光様、内密にお話したいことが……」


 額に汗をかき、切羽詰まった様子で見つめてくる朱熹を見て、曙光は「とりあえず中へ」と言って朱熹一人を中に入れた。


 執務室は大きな黒机を取り囲むように椅子が六脚置かれ、壁は一面書物で埋まっていた。


 ドアを閉め、二人きりとなった曙光は、朱熹に椅子に座るよう差し出した。


 朱熹は首を振り、本題に入った。
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