なりゆき皇妃の異世界後宮物語
(いけない、いけない、私は紫家の令嬢で、正妃。

私にそんな自由はないんだった)


 またため息をつきそうになって、ハッと思いつく。


(私はどこまでの自由が認められているのだろう)


 そんなこと今まで考えたこともなかった。


 自分から部屋の外に出ることは一度もなかった。


幽閉されていた期間があったから、その延長のように捉えていた。


 朱熹は意を決して呼び鈴を鳴らした。


するとすぐに女官が扉口に現れた。


「お呼びでしょうか、皇后様」


「ええ、少し聞きたいことがあるの。いいかしら」


「かしこまりました」


 部屋に入ってきたのは、二十代後半の今香(こんこう)という名の女官だ。


 今香子爵の令嬢で、時の侍従長である甘露(かんろ)の紹介により皇后付きの女官に出仕することになった生粋のエリートである。
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