なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 家柄、教養、礼儀作法も完璧で、朱熹の負担にならないようにほどよい距離を保ち、押しつけがましい気遣いもない。


 ただ笑顔もなく淡々と業務をこなすので、壁を感じ打ち解けた会話はできなかった。


 今香は膝をつき、拱手の礼をして朱熹の指令を待っている。


(もっと、気楽に構えてくれれば、仲良くなれそうなんだけど……)


 あまりにも完璧な女官であるがゆえの悩みだった。


 [人の上に立つ者は、いつだって孤独である]


いつか読んだ本に書いてあったことを思い出す。


 朱熹は気を取り直して、今香に話し掛けた。


なるべく親しみを感じてもらえるように優しく問いかける。


 仲良く話すなんて恐れ多いと思われて分厚い壁を作られても、いつかはその壁を壊したい。


人の上に立つ者は孤独で、これは自然の摂理だと言われても、努力もせずに受け入れることはしたくない。


朱熹はそういう性格だった。
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