遊女船-devil child-
なんで!なんで??
2人は、ずっと問いかけてくる。

私は、2人の質問攻めに
耳を塞ぎながら教室まで歩いた。

教室に入ると担任の数学教師の
長谷部誠-ハセベマコト-(28)が話しかけてきた。

「あー、重盛!副委員長は決まったのか?」

「あ…いぇ、まだです。」

「なんだ?まだなのか!明後日には他クラスとの合同会議があるんだぞ!今日中に選別して決めとくよーに!」

「私は、月島さんにして欲しいとお願いしたのですが、月島さんは修学旅行来ないそうです。」

げっ!それ、長谷部に言うなよ…。
と、思いながら素知らぬ顔で教室に入ろうとした時

「あ!月島!!お前、まだそんな事を言ってるのか!修学旅行来ないなんて許可できないからな!」

「えー…。でも、あ、うち貧乏だしぃーー??」

「ふざけるな!葉月ですら参加するんだぞ!」

「あーーー!先生ぇ!酷い!孤児院育ちだからって馬鹿にしないでーー!」

里奈が、泣きながら訴えてきた。
長谷部の奴、どうしたらいいかわからず
オロオロするだけでなんの解決もできない。

「あ!ち、がうっ!そーゆー意味じゃ…すまない。」

実は、里奈は幼い時
交通事故に合い、両親は他界している。

だから、幼い時から孤児院暮らしだったけど
その事を隠したりせず、孤児院にいる子供達は
みんな、家族だと自慢してくるような
そんな、優しい女の子なんだよね。

だから、そんな差別的な発言には
すごく怒ってしまう。

「と、とにかく!!月島!今日家庭訪問な!?」

「え!!?嫌ですよー!」

「ご両親に、修学旅行の件について話し合う必要があるから無理だ!」

その言葉を遮るようにチャイムがなった。

「よし、じゃあ3人は席に着いてくれ!」

里奈が私に向かって駆け寄ってきた。
腕にしがみつき、ペロッと舌を出した
その仕草は、あざといそのものだった
でも、憎めない可愛さに私は騙されてしまう。



「里奈、嘘泣きだったの?」

「だって、孤児院のこと言われたらムッってしちゃったんだもーんだ。」


そんな話をしながら席に着いた。


教室の窓側の一番後ろの席が
私の席。

斜め前には、里奈がいる。
チラチラ後ろを振り向いては
変顔したり、笑わせてくるから
笑いを堪えるのが大変。


「よーし、席についたな?日直!号令!」


長谷部の声で、それまでザワザワしてた教室も
静まり返り、あー。またいつもの日常の始まりをつげた。
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