遊女船-devil child-
授業なんて、退屈で仕方ない。

一番後ろの席から、まわりを見渡せば
みんな好き勝手に何かしてる。

携帯片手にゲームしたり。
化粧したり。

そういう日常の何気ない人間観察が
私の楽しみでもある。

あ、今日は化粧が派手目だ…
あー。合コンあるんだ。
なーんてことも、だんだん分かってくる

あっという間に時間なんて過ぎていく。


⦅ブブブッ……

あ、マナーモードにしてたっけ。
誰からだろ??


『 桃華、話がしたい。』



…涼からのメール。



今更、話をしたって何にも解決なんかしない。
そう、思ってたのに、涙が出止まらない。

私、心の奥底では
涼からの連絡ずっと待ってたんだって
思い知らされた。



『 涼…、私言わなきゃいけないことがあるの。今日の放課後少し会える? 』



私は、涼に伝えなきゃいけない秘密がある。

誰にも言えずに悩んでた…
ずっと、苦しかった。




⦅ブブブッ……


『 部活、早めに切り上げて行くから待ってて 』

『 いつものカフェで待ってる。』


そんなやり取りをメールで済ませ
フォルダーの中の
涼との写真を眺めてた。



涼との出会いは、本当に偶然だった。



お互い出る気もなかった
合コンの人数合わせに呼ばれた者同士で

カラオケで盛り上がるメンバーの端っこで、
シラケながら、取り出した小説が
同じものだったから

まさかの偶然に、お互い目を合わせて
笑ってしまって…



「あ、好きなんですか?小澤涼の小説…」

思わず聞いてしまった。


「は、はい!あー、いや実は同姓同名の作者だったから買ってしまった。なんて言う動機が不純です。はい。」


なんて、しどろもどろに言うもんだから
吹き出しそうになってしまった。



「じゃあ、小澤涼くん?でいいのかな?」

「あ、はい!小澤涼、N高1年です。」

「私は、月島桃華K高1年です。」



そんな出会いから3ヶ月後に
メールで会いたいって連絡がきて…


待ち合わせのカフェで告白されて
付き合い始めた。


優しくて、正義感の強い彼は
私の自慢の彼氏で
手を握ることも2ヶ月以上かかるような人で

大切にしてくれてることが
本当にわかる毎日だった。



そんな、彼だから
私は、彼になら全て捧げてもいいと
ずっと思ってた

2人が付き合い始めて半年の記念日に
私達は、初めての日を迎えた。




ーずっと一緒にいようね。ー




そう誓ったはずの2人が
まさか、ずっと会えなくなるなんて
この時は思わなかった。





放課後
約束のカフェに涼がくることはなかった。


もう、この恋は
終わりを告げたのだと、心に言い聞かせた。
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