彼女は、肝心な言葉が足りない。






 私は、一歩足を踏み出す。

 
 教室の生徒をチラッと見ると、驚きに目をパチパチとさせ私を凝視してくる。

 
 これは決定だな。

 案の定、イケメンがくるかと思われていたようだ。


 可愛くて綺麗な子だったら許させるのかもしれないけど、生憎容姿は整っているほうではない。

 ごめんな、でもパシリにはしないでくれ。普通な高校生活を送りたいんだ。



 「自己紹介しなさい」

 「え?…と、卯月怜(うづきれい)です」


 自己紹介?

 少しポカンとして、慌てて名を名乗る。

 頭を下げたと同時に、くすくすと嫌な笑い声が聞こえてきた。


 まあ瓶底眼鏡に前髪たらーん、のダブルコンボだもん。

 目立たないほうが無理だよね。 



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