彼女は、肝心な言葉が足りない。
定番の足出し攻撃に屈することなく、飄々と歩く私にキッと誰かから睨みつけられる。
モブ勢の民よ、その行動を控えなけば一生モブのままだぞと思いながら席につく。
いかんいかん、ニヤッとしそうになってしまった。
ここで口許を緩めれば、完全に不審者になってしまう。
犯罪予備軍と同じくらいになるのはイヤだ。
「ねぇ、卯月チャンだっけ」
隣から聞こえる声に、キョトンとしながらそちらに視線を向ける。