彼女は、肝心な言葉が足りない。
表面は、きゃー!リアル某王子だぁー!なんてどっかの種族が叫び出しそうだけれど、目の奥が笑ってないので無表情よりも怖いんじゃなかろうか。
まあ顔が顔なので、無表情のほうが心臓に悪いだろうけど。
「……ふふっ、そう。じゃあ怜チャンで宜しく」
周りは、うっざ!なにあの女!とか、地味ださ眼鏡のくせにちょーしにのんなっての!!と、言いたい放題に喚きだす。
担任といい、目の前のボサボサといい、イケメン補正が無駄になっているような気がするのは私だけだろうか。
ていうか、私はさっき苗字のほうが好きだと言っただろう。
なんだ、このボサボサは一体私に何を求めているんだ。
怜チャンって呼ぶなバーカ!と餓鬼みたいに言えばいいのか。
そんなもん求めんな、と正直に言えばいいのか。
全くもう、仕方ないな。