亘さんは世渡り上手
少し傷付いた顔をする生徒会長。俺はその瞬間を見計らって、ぐいっと彼女の腰を引き寄せ――
「ええ。弱味に付け込んで目一杯甘やかしてあげますから、早く振られてくださいね」
とびきり優しい笑顔を捧げた。
「あ……ア……」
パクパクと生徒会長の口が開閉する。
顔は今にも沸騰しそうなくらい赤い。
「はい……」
その返事で、すべてが終わった。
「すみません会長、ベタベタ触ってしまって」
すぐに体を離す。
演技とはいえ、ちょっとやりすぎたかな……。
「う、ううん……」
しばらくの沈黙。
生徒会長がふらふらと司会に近付いてマイクを奪う。そして、すぅ、と息を吸った。
「優勝は和泉くんです……」
ほぅ、と熱い息を吐く。遠くを見つめるような焦点の合わない目が、天井を向いた。
バタン、と音を立てて倒れてしまう。
「か、会長!?」
俺、そこまでのことやった!?
会場全体がどよめく中、一番に動いたのは三好先輩だった。
ひょいと会長をお姫様だっこで持ち上げると、司会のマイクに横から近付く。
「ミスターコン、終わり! 優勝は和泉理人くんでしたー! 次はミスコンだよー」
それだけ言って、会長を抱えたまま舞台袖へ歩いていったのだった。
会場の誰もが思っただろう。
三好先輩が優勝なんじゃないか――と。
だって、その後ろ姿は誰よりもかっこよかったんだ。