亘さんは世渡り上手
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「クリスマス!」
ダンッ! と俺の机を壊しそうな勢いで叩くのは、やけに戦士のような目をしている谷口だ。
季節は冬、十二月。確かにもうすぐクリスマスだけど、それを俺に言うのはどういう意味か。
「ど、どどどどうやってケン先輩を誘ったらいいと思う!?」
「自分で考えて」
「ひどっ! それがかつて告白を断った相手に対する態度!?」
「いや……だってあの先輩、どう誘ったって逃げそうだし……」
「うっ……確かにね……」
はい閉廷。
「……叶葉はどう思う?」
俺のやる気のなさに呆れて、今度は亘さんを標的にしやがった。
亘さんの反応は鈍い。返事がないのが気になって目を向けると、ぼうっと虚空を見つめていた。
どことなく熱っぽい瞳と赤らんだ頬。もしかして、熱でもあるんじゃないだろうか。
「叶葉?」
「っえ……? あ、な、なんですか悠里ちゃん」
「あー、えっと……なんかぼーっとしてるけど、どうしたの?」
「へっ!?」
亘さんは顔をさらに赤くする。
やっぱり……。俺は席から立ち上がって、亘さんの頬に手を当てた。
「あっ……和泉くん……?」
十二月の冷気にさらされた俺の手は冷えきっている。反対に亘さんの頬は適度に熱く、お互いの触れた部分の温度が混ぜ合って温くなっていく。