亘さんは世渡り上手

■■■



「クリスマス!」



ダンッ! と俺の机を壊しそうな勢いで叩くのは、やけに戦士のような目をしている谷口だ。


季節は冬、十二月。確かにもうすぐクリスマスだけど、それを俺に言うのはどういう意味か。



「ど、どどどどうやってケン先輩を誘ったらいいと思う!?」


「自分で考えて」


「ひどっ! それがかつて告白を断った相手に対する態度!?」


「いや……だってあの先輩、どう誘ったって逃げそうだし……」


「うっ……確かにね……」



はい閉廷。



「……叶葉はどう思う?」



俺のやる気のなさに呆れて、今度は亘さんを標的にしやがった。


亘さんの反応は鈍い。返事がないのが気になって目を向けると、ぼうっと虚空を見つめていた。


どことなく熱っぽい瞳と赤らんだ頬。もしかして、熱でもあるんじゃないだろうか。



「叶葉?」


「っえ……? あ、な、なんですか悠里ちゃん」


「あー、えっと……なんかぼーっとしてるけど、どうしたの?」


「へっ!?」



亘さんは顔をさらに赤くする。


やっぱり……。俺は席から立ち上がって、亘さんの頬に手を当てた。



「あっ……和泉くん……?」



十二月の冷気にさらされた俺の手は冷えきっている。反対に亘さんの頬は適度に熱く、お互いの触れた部分の温度が混ぜ合って温くなっていく。

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