彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



「ああ!君が『連れ』かい?こんな美人とデートなんて、羨ましいねぇ〜」

「え…?!」


中年男の勘違いに、崇はたじろいで思わず絵里花に視線を合わせた。

『違います!』と、すかさず絵里花が断言しようとするも、中年男はそれを阻むように大声で笑った。


「でも、君。こんな美人の連れにしちゃ、ありえないほど普通だねー。普通すぎて、気後れしないかい?」


崇は言葉に詰まって、思わず顔を赤らめた。男が指摘したことは、絵里花と付き合っていた時にずっとコンプレックスに感じていたことだった。


「その人の連れは、彼じゃありませんよ」


その時、その場に現れたのは、辺りの空気とは隔絶した存在感を放つ史明だった。

絵里花にちょっかいを出していた中年男は、その超然とした容姿に圧倒されて固まってしまう。その場に居合わせた崇も、訳が分からず目を丸くするばかり。


「もうこれから帰るところなんです。せっかくのお誘いですが、申し訳ありません」


史明の涼しげな目に見据えられ(見えてないけど)、中年男は口をパクパクするばかりで言葉も返せない。


「それじゃ、行こうか?」


皆と一緒になって唖然としていた絵里花に向かって、史明が微笑みかける。


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