彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



絵里花が我に返って頷くと、史明は腕を動かし肘を曲げて、絵里花をエスコートするような仕草を見せた。絵里花は少しためらいながら、崇の呆然とする表情をチラリと確かめて、史明と腕を組む。

事の成り行きを見守っていた今日子の、同じく呆然と立ち尽くす前を二人はゆっくりと歩いて、


「ご馳走さま」


バーテンダーに声をかけると、悠然と店を出て行った。


「……すごい。びっくりするくらいの美男美女だったね」

「もしかして、モデルさんとかかな…?!」


バーのどこからか、そんな呟きが聞こえてくる。そのざわめきの中で、崇と今日子は顔を見合わせた。


「……どういうこと?なんで絵里花先輩の彼氏、違う人になってるの?」

「いや……。あれは、違う人じゃなくて、食事をしたレストランで会った人じゃないか?」

「ええっ!?」


今日子は大きく目を見開いて、驚きを隠さなかった。


「ウソ!!あんなにカッコいい人が、あんなダサすぎる人と同一人物なわけないもん!!」

「でも、『先程はどうも』って、言ってたぞ」

「ええっ!?」


今日子の表情が、驚きから一変して青ざめた。


「君は、さっきあの人にナンパされたって勘違いしたんだろ?俺と一緒にいるはずなのに、誘いに乗るような素振りを見せて、あの人はどう思っただろうな」


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