彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



今日子は崇のその指摘に動揺して、返答を探す間、視線を宙に漂わせた。


「……そ、そう言う崇先輩だって、さっき絵里花先輩が困ってたら真っ先に駆けつけてたじゃない。まだ未練があるんじゃないの?」


そんな今日子の苦し紛れの反撃に、崇も眉をひそめて険しい顔になる。


「絵里花とは、嫌いになって別れたんじゃないからな」


その言葉に反応して、今日子の目つきも険しくなって、崇を睨みつけた。


「それって、どう言う意味?」

「絵里花は『嫌いだ』って思えるような女じゃないんだよ。いっそのこと、そんな風に思える女だったんなら、今もまだ付き合ってたかもしれないな」

「は?!何言ってんの?さっきの絵里花先輩の彼氏見たでしょう?崇先輩なんか、とっくの昔に振られてるから!」

「そうだな。俺の存在なんか、あの人に話しかけられただけで忘れられてしまうくらいだからな」

「……!!」


チクチクと痛いところを突かれ続けて、今日子は我慢ができなくなった。顔を真っ赤にさせて、怒りが頂点に登り詰める。


「もう……、帰る!!」

「あ、そう。俺はここで飲んで帰るよ」


崇は冷ややかな態度で言葉を返し、いつものように今日子のご機嫌をとることはしなかった。



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