死神の恋
翌日の昼休み。教科書とノートを持って裏庭に向かう。
彼の指示に素直に従ってしまったのは、定期考査で少しでもいい結果を残したいと思ったから。目もあてられない点数を取り、母親のカミナリが落ちておこづかいを減らされてはシャレにならない……。
新人大会が終わってからメンタルが最悪だった私も、昨日の昼休みを過ぎてからは普通に笑えるようになったし、今日の朝から再開されたダンスの練習もこなしてきた。
私が平常心を取り戻すことができたのは、ひょっとしたら彼のおかげ?
真美やクラスメイトの愛梨と菜々美の励まされても元気が出なかったのに、彼と会って話をしたら気分が落ち着いたのはどうしてだろうと、首を傾げた。
でも今は、そんなことより勉強、勉強……。
右手に勉強道具一式を、左手には母親が握ってくれたおにぎりを持って小走りした。
校舎を出ると右に曲がり、テニスコートの脇を通りすぎ、駐輪場の前を駆け抜ける。二ケ月前は訪れたことのなかった裏庭も、今ではすっかり行きつけの場だ。
初めてこの場所訪れたとき、彼はサツキの植え込みの裏で昼寝をしていた。けれど今日はベンチに座り、口をモグモグと動かしている。
彼がなにを食べているのか気にしつつ近づいてみれば、その手には昨日と同じ焼きそばパンが握られていた。
二日連続で同じパンを食べるくらい、焼きそばパンが好きなんだ……。
そんなくだらないことを考えながら、ペコリと頭を下げた。