御曹司とおためし新婚生活


そして──部長が触れるなと牽制した日から二週間。

あれ以来、鳳さんはパタリと私にちょっかいを出すのをやめていた。

からかい半分といった感じでデートしようよ等の発言はあるけれど、触れるという行為は一切してこない。

それには、鳳さんと仕事をする際、部長が同席するようになったことも一役買っていると思う。

鳳さんは、そんな東雲部長を過保護だと笑っていたけれど、私としては嬉しいようで複雑な気持ちを抱えていた。

東雲部長の気持ちがよくわからないのだ。

体を重ねて、キスまでして。

毎日同じ屋根の下で過ごし、朝のキスも週末の映画デートだって欠かさずしているけれど。

特別、付き合おうとか気持ちを確かめ合うようなこともなく、私たちは部下と上司という関係を保ったままだ。

あの時、触るなと口にしたのはどんな気持ちからか。

以前想像した通り、もしかしたら懲らしめる為だったのかもしれないけれど、そこに意味を持たせたいと思うのは私の気持ちが東雲部長に向いているからで。

その真意を聞けないまま、聞く勇気も持てないまま、今日まで過ごしていた。

何もせず動かなければ、私たちはこれ以上の進展はしないだろう。

鳳さんだって私をからかうのに飽きてきて、結婚生活を試すという名の同棲期間は終わりを迎えるのだ。

──そう思いながら過ごしていたある日の午後。

< 101 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop