御曹司とおためし新婚生活


不動産業界についてはそれほど詳しくないけれど、東雲不動産といえば数多くのオフィス物件やショッピングセンターを保有している不動産王と呼ばれる会社だ。

東雲という名が被るけれど、そんな人が明倫堂で働いてるのも不思議だし、けれど何かしら関係はあるのかなと思いながらも声にすると。

東雲部長は肩を抱いていた手を離し、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出しながらさらりと言った。

「俺の親が経営してる会社だ」と。


「えええっ!?」


東雲部長が、不動産王の御曹司!

驚いて廊下中に声を響かせてしまい、落ち着けと窘められる。

幸い辺りには人はおらず、私たちはエレベーターホールで足を止めた。

東雲部長の長い指が昇降ボタンを押す。


「でも、それならなんで明倫堂で働いているんですか」

「俺には兄が二人と、弟が一人いる。その兄二人が、俺と弟は別の道を選んでも構わないと」


そこには、他の企業で東雲の根を張ってこいという意図も少なからずあるようだと話した後、部長はスマホを耳に当てた。


「──ああ、兄さん、仕事中に悪い。実は急ぎで頼みたいことがある」


かくして、私たちはそのまま東雲不動産に赴き、東雲部長と東雲不動産の力により、鳳さんの仕掛けたダブルブッキング事件を解決することができたのだった。


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