曖昧なポジション
タクシーが通る駅前まで夜道を並んで歩く。
水沢と一緒にいられることに幸せを感じる僅かな時間。
「今日はさ、サンキュな」
「うん?」
「残業に付き合ってくれて」
小さく頷く。
「どういたしまして」
「おまえも早く帰りたかっただろ?また明日も会社だし」
「いーよ、別に」
水沢が頑張っているその横にいられるのなら、残業だってなんだってするよ。
朝までだって、できるよ。
恋する乙女は最強なんだ。
「日曜は、映画館の前に1時集合な」
「……」
街灯に照らされた横顔に、ドキリと胸が音を鳴らした。
高い鼻に薄い唇。
みんなが憧れるものをこの人はなんでも持っている。
「聞いてるのか?遅刻すんなよ」
「分かってる」
もし突然、街灯が消えて相手の表情もよく見えない暗闇になったとしたら、私は水沢に抱きつくかもしれない。
私を彼女と勘違いして、あなたは優しく触れてくれるだろうか。