きっと夢で終わらない
「どうしてですか?」

「陸上競技大会でしょ?」

「……あ」

「忘れてた?」


頷くまでもなく、弘海先輩は可笑しそうにした。
完全に忘れてた。タンス奥に眠ってるクラスTシャツを探しださなければいけないな。

この高校は三年に一回、九月に文化祭と、三年に二回、六月に陸上競技大会が催される。文化祭は高校一年の時に経験して、三年生の今年は陸上競技大会。
基本的に全員参加の種目は午後の最終種目である学級対抗リレーだけで、あとは運動のできる人間による個人種目の競い合い。運動が苦手な人間や、興味のない人間にとっては最高に暇な学校行事。

それなりに高順位だと、学校側から景品が出るので、体育担当を担任にもつクラスはもちろん、各クラスも体力自慢がこぞって参加する。言わば運動部と運動が好き、あるいはできるひとのための祭典だ。

私は人数の関係で学級対抗リレーにも参加しないし、みんなが騒ぐのを見ながら、晴空の木漏れ陽の下で弁当を食べるだけの日だ。
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