ストーカーに溺愛されても嬉しくないんですが。


先輩は観念したように頭をかきながら話始めた。


「この前一緒に帰ったときさ、」

一緒に帰ってはないですね。

正しくはストーカーしてたときですね。

「すっげー綺麗な虹が出てたときあったじゃん?」

同意求められても知りませんが。

あ、でも虹虹うるさいときがあった気がしないでもない。

「その虹を写真で撮ってるときに、たまたま!?偶然!?つゆが入り込んだんだよ!それを宏介に見せただけなんだよ~!」


「...その写真見せてください」


「え~、そんな綺麗に虹撮れてないよ」


「じゃ、失礼します」


すぐさまその場から立ち上がるわたし。


「あ、ちょ、ちょい待った!!見せる!見せるから!」


最初から出せばいいものを。



「...虹ではなく完全わたしメインですよね」


その写真は、わたしの横顔が写っていて、

肝心な虹は、後ろに小さく小さく映りこんでいる程度。


なにがたまたま偶然ですか。


「嘘つきは嫌いですよ」


「!?ごめんー!!

ほんの出来心だったんだよ!!

最初はほんとに虹を撮るつもりだったんだ!!

だけどつゆの横顔が綺麗すぎて、つい...!!」


「...」


ふーん。

つい、ね。


「今すぐその写真消してください」


「そんなあ。学校がない日はこれを見てつゆに会った気分でいるのに!!」


その発言は完全にきもいです。


わたしのそんな目線に耐えかねたのか。



「わかった!消す!でも、その代わり...」


「嫌です」


「まだなにも言ってないじゃん!!」


「嫌です」


「...しゅん」


え。まったく可愛くないんですけど?


「せめて今の景色だけでも撮ってやる!!」


先輩はそんなことを言って周りの風景をパシャパシャ撮りはじめた。


「つゆとここでお昼食べたって証拠!!」


「...」


「つゆは撮らないから、せめてパンだけは撮らして!!」


サンドイッチとカレーパンは食べてしまったけど、まだ残っているあんパンとクリームパン。


...この先輩、なかなかやばいやつだ。


パシャパシャパシャパシャッ


って何回撮るんですか。


パンをそんなに撮っても意味ないでしょ...。


「......はあ。仕方ないな...」


わたしの口からは思わずそんな言葉がこぼれて、

先輩が持っているケータイ電話を奪って。


ーーパシャッ


「はい。これで満足ですか」


「...へ?え?え?...」


わたしに返されたケータイの画面を見て、震えている先輩。


そこに写っているのは...

わたしとストーカーのツーショット。


ちなみにふたりの距離は人2.5人分。


わたしは目線をはずしているうえに真顔だし、先輩も不意討ちくらった表情をしている。



「ね、念願のおおおおお!!ツーショットーーおおおおお!!!!」


喜びようが異常。


ツーショットって言っても他人にしか見えない写真だと思いますけど。

まあ他人なんだけど。


「つゆ!!もうこのパン2個とも持っていってくれ!!」


「...いや、1個でいいですよ」


合計3個も食べれないですよ。


てゆか、ツーショット=パン2個なんかーい。


「じゃあ、半分こ!な!」


先輩はそう言ってあんパンとクリームパンを2つに割った。


そしてわたしにはいっ!と差し出す。


「...ありがとう、ございます」


あんパンもクリームパンも甘かった。


なんだか異常なほど甘く感じた。
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