大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「――千歳くん、好きな人ができたんだって」
そこで、ようやく千尋は、私を見た。
シューー、と勢いのある音は次第に消えていって、花火の寿命を知らせる。
飛び散る光も少なくなって、それで、完璧に消えた。
千尋は、バケツに役目を終えた花火を放り込んで、それから、しゃがんだまま私の顔をのぞきこむ。
「…それを千歳くんは虹に言ったの?」
「うん。サークルの後輩って、教えてくれて。幸せそうに、その人のこと話してくれた」
「…は、最っ低、だ」
「……最低じゃないよ」
「いや、最低だよ」
最低、じゃない。千尋。
分かってほしいのに、千尋が私の顔をのぞきこんだまま、そっと手を後ろから伸ばして優しく頭をなでてきたから、今日初めて私に触れた千尋のその手を私は、甘んじて受け入れるしかなかった。
いや、違う。
どんなでも、千尋が触れてくれたその行為を拒みたくないって気持ちに従ったっていうほうが正しいかもしれない。
千尋の瞳は、まるくて温かくて優しい。
あの日、この公園で、力の加減も分からず私を抱きしめた千尋のまま、年だけを重ねて、私の頭をなでることだけはうまくなって。
だけど、千尋がくれるのは、優しさ、だけだ。
ただ、優しさ、だけ。