大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
恐る恐る千尋を見上げたら、千尋の目は伏せられていて、うまく瞳をあわせることはできなかった。
最低だ。
分かってる。
逃げ出したい。でも、逃げ出せない。
タイムマシンがあったらほんの数分前に戻りたい。ここまで言うつもりはなかったのに。
“怖い”っていうより、今、自分が気持ち悪くて仕方ない。
あざ笑うみたいに、風が首筋をなでて、おろしている髪がふわりと浮く。
いつの間にか、道の中途半端なところで、私たちは立ち止まっていた。
後ろからチャリリン、と自転車のベルの音が、しばらく私たちを包んでいた沈黙をやぶって
、怪訝な顔をしたおじさんが自転車にまたがって私たちの横を通り過ぎていった。
そこで、ゆっくりと口を開いたのは、千尋だった。