大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
食べてるところを見られて笑われる感じ。
既視感。
そうだ、この前のクレープ屋さんでの千尋だ。
だけど目の前の水嶋くんには千尋と違って、瞳の中に温かさはあんまりなくて、ただからかうだけの色が見える。
「…やっと食べられたんだから、味わいたいんだもん。笑わないで」
「俺なんもいってないよなー」
「からかうみたいな顔してるじゃんか、水嶋くん。携帯でもいじっててほしい…」
見られたら食べづらい。
それは、千尋の前よりも水嶋くんの前の方が強く思う。
意地の悪い水嶋くんはそれでも携帯をいじることもなく、私を見ていて、結局諦めてそのまま食べるしかなくなった。
スプーンの上でパンナコッタの上にいちごソースがのるようにして、ぱくぱく、口に運び続ける。
見られているけれど、おいしさに罪はないし、気にしない気にしない、の呪文を唱えながら、パンナコッタに集中していたら、不意に、水嶋くんの手が伸びてきて。