大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「……っ、」
彼の親指が唇のはしをなぞるようにぬぐったから、心臓が、どくん、と一度音を立てた。
彼はその親指をぺろりとなめて、ゆるい表情のまま少し目を細める。
「いちごソースついてた。甘いねーこれ」
そういうことをさりげなくしてしまうところに、彼の女遊びの片鱗がうかがえる。
はー、っと溜息をついて、水嶋くんを見る。
ありがとう、っていうべきところなんだろうけど、親指でぬぐってそれをなめるなんて、そんなことされたら素直にお礼なんて言えなくて。
「…本当に女慣れしてるよね」
そう言って、ぱくぱくと残りのパンナコッタを食べるのを再開したら、水嶋くんは、心外ー、なんて馬鹿にするみたいな口調で言った後、お水を飲んだ。