大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
あの朝だったんだ。
私のことを千尋が虹ちゃんではなく、虹、って呼び始めたのは。
私は、その前日に千歳くんに言われた言葉を思い返して、千尋なんて好きじゃない、と叫びたくなったけれど、気がついたら、差し伸べられた手をとっていた。
それで千尋の手に触れた瞬間、涙腺がばかみたいにゆるんで、朝から大泣きしてしまったんだ。
千尋は困っていた。
だけど、それよりも、苦しそうな顔をしていた。
まるで自分が振られたみたいな顔で、いきなり泣き出した私の前にいた。
それから動物園どころではない私の手をぎゅっとつないで、そのまま引っ張るように近所の公園まで連れて行った。
「千尋ね、泣いてる間、ずっと抱きしめてくれたの。でもさ、それまで、千尋って女の子のこと抱きしめたことなかったんだよ、たぶん。力の加減が分からなかったのかな、抱きしめる力がかなり強くてね、泣きながら苦しいなぁとかちょっと思ったりして、」
「うん、」
「でも、自分でも信じられないけど、そのとき気づいたの。千歳くんの言う通りで、私、千尋のことが好きだったのかもしれない、って。千歳くんと付き合って、千尋との距離が離れちゃった時から、千尋の不器用な優しさがちょっとずつちょっとずつ恋しくなっていったんだと思う」
「…うん、」
「いつから恋になったのかは分からないけど、ちゃんと気づいたのはあの日だったよ」