大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
そうやって、エゴだらけの満足感に浸ろうとしていたら、ふと髪をひかれるみたいに、忘れていた記憶をひとつ思い出す。
「……あのときだ、」
思わず、千歳くんに向けるでもなくつぶやいてしまったら、千歳くんは、うん?と首をかしげた。
もうすぐ花火がはじまるのか、屋台のほうはさっきよりも騒がしく、明るさの後ろでは夜も深まっていく。
そんな中で、千歳くんと別れた次の日の記憶を鮮明になぞる。
「千尋が、私のことをね、虹ちゃんじゃなくて、虹って呼ぶようになったの。千歳くんにふられて、その日は意味が分からなくてずっと怖かった。千歳くんの部屋を出てからの記憶は今もないもん。一人じゃ泣きもできないくらい、とにかく怖くて。それでね、別れた次の日の朝、千尋がなぜか私の家の前にいて、『虹、今日学校サボって動物園行こう』って、」
朝が弱いくせにそう言って、私に手を差し伸べた。