社長はシングルファーザー
ヒロヤと修成は俯いたまま無言を貫こうとするので、彼女さんがオロオロし始める。

そこに注文したアイスコーヒーが運ばれてきて、私はストローを勢いよく吸った。

「ねえ!あなたは何でそんなに平然としていられるのよ!」と彼女さんに少し怒られた。

「何でって…二人ともいつも喧嘩するとこんな感じだしもう慣れてるから。それにお互いの今後のことについて話し合うんでしょう?私たちが口出すことじゃないかな?って思うから私はあくまで見守るだけ」と私が言うと、修成は私の手を繋いできた。

緊張すると、いつも私に引っ付いてくるクセは何年たっても治ってないようだった。

「ほら、修成…大丈夫だから、自分の素直な気持ち伝えなさい。子どもじゃないんだから」と私は修成に声をかけて、手を握り返してやる。

「ヒロヤ君もよ?なんのために会ってるの?ちゃんと話しなさい。そして、この場に私を呼んだんだから、納得させる答えをちゃんと言って!」と彼女さんがヒロヤを促す。

そして、ようやく?口を開いたのは、修成だった。

私に話した内容を、詳しく、ヒロヤにぶつけた。

ヒロヤは何も言わず最後まで話しを聞いた。

そして、

「俺が悪かった。もちろん、友里(彼女)も大事だけど、それ以上に俺は…お前のこと思ってる。お前は俺の生活の一部で、離れることは考えてない。もちろんこれからもサーファー一緒に続けて行くつもりだし」と本心を伝えたヒロヤ。

彼女にはそれを理解した上で大事に付き合ってほしいのだと伝えていた。

修成は震えながら涙を流す。

そんな修成を今度は優しく私は抱き締めて、良かったねと声をかけた。

「ヒロヤ君にとって、修成君は家族より、家族なんでしょう?大切な人、守りたい人、一緒にいたい人よね?その気持ち、大事にしてほしいし、尊重してほしいの。私は二人の関係を潰す気なんてないし、もちろん見守っていたいわよ。あ、浮気だけは許さないけどね!」と彼女さんは笑った。

そして、「これからも皆に憧れてもらえるような生きる伝説になって。私はそんな二人を1番近くで見ていたいから」と続けた。

理解ある彼女さんようで、私もホッとした。

「なら、棄権なんて無いわね?私も負けてられないわ。ちゃんと追いかけていけるように、最高のパートナー探さなくちゃね!」と私は言った。

「ありがとうございます。こうして、ヒロヤさんとちゃんと話せる場を作ってくれて」と私に笑いかける、修成。

私は繋いでいた手を離して、

「よく頑張りました」と頭をポンポンしてあげた。

そしたら、修成は満面の笑みを浮かべた。

その辺で、彼女さんから

「あのぉ、3人の関係性を聞きたいんですけど」と言われた。

「俺の元カノ」というヒロヤ、

「違います!センパイは俺のです!」という修成。

「二人とも!嘘つかない。ヒロヤは私のタメなの。同じ夢を追いかけたサーファー仲間よ。そしてその幼馴染みである修成は私の後輩。だからほんとに仲良くてね。あ、けど心配しないでね?二人に惚れることなんてまず無いから。私も最近は少し気になってる人いるしね!」と私は言った。

「あら?素敵ね。あなたもプロサーファーなのね?」と彼女さん。

「彼女は日本を代表するトップサーファーなんだ。俺らはペアでトップだけど、彼女はソロでトップ。だから俺らはソロでは彼女の背中を追い続けてるの」とヒロヤは言った。

「あら?そうなのね。凄い方なのね」と彼女さんは笑ってくれた。

私たちはしばらく談笑してお店をあとにした。

外はすっかり暗くなっていた。
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