社長はシングルファーザー

そこへ誰かが私の横に来て座り、優しく私の背中を擦ってくれた。

「大丈夫ですか？センパイ…」って。

声で顔をあげなくてもわかった。

彼は私の後輩の修成だ。彼もまた日本を代表するプロサーファーで、私が憧れる人物。

ペア大会で連覇し続ける伝説の男…

「…修成…？」と私が言うと、

「大丈夫ですよ。センパイの涙は見えてません。美しく輝いてます」って修成らしく励ましてくれた。

「ありがとね。仕事で色々あってね…」と私が言うと、

「そうですか…じゃぁ深くは聞かないでおきますね」と優しく居心地のよい空間を作ってくれる。

「…俺は…ﾋﾛﾔさんと喧嘩しました。彼女が出来て…そこまでは俺も嬉しかったんですけど…」と胸のうちを話してくれた。

彼女優先になったﾋﾛﾔが一緒にいてくれなくて、練習できないと。

だからペア大会は棄権する覚悟でいること。

ﾋﾛﾔ以外の人と組みたくないから、ペア大会を引退して、ソロで腕を磨きたいとのこと。

そんな話を、修成はしてくれた。

「私にとっては、いつまでも伝説の男…リスペクトする後輩よ！それだけは忘れないで」と私は声をかけた。

「ありがとうございます。あ、今年もするんですよね？運命のペア（パートナー）探し」と修成が言う。

「もちろんよ。これから共に分かち合って、学びながら成長出来る人を見つけたいわ。今年は何となくだけど出逢えそうな気がしてるから」と私が言うと、

「なら、朗報ありますよ」と修成は言ってニヤリと笑った。

「高二の男の子なんですけどね、かなりセンスあります。始めて５年くらいらしいんですけど」と修成は言う。

「あなたが言うなら間違いないわね。あなたも、日本を代表するプロサーファーだものね。で、名前とか聞いた？」と私が言うと、

「田辺圭斗くんだって。」と修成は言った。

「ﾀﾅﾍﾞｹｲﾄ？もしかして…私が１番会いたがってる人かも！」と私が言うと、

「ほんと？それは良かった。この海にはよく来てるみたいだからそのうち会えるかもね」と修成が笑ってくれたので、私も笑えた。

「…修成…あなたはもう一度ちゃんとﾋﾛﾔと話し合いなさい。辛いなら同席してあげるから。ﾋﾛﾔも気持ちは同じはずよ。ずっと、一緒にいるんだから」と私が言うと、

「わかりました。そうします。なので、隣で見守っていてもらえませんか？」と修成は言うので、

「もちろんよ。ﾋﾛﾔだってあなた以外とは組めないでしょ？組む気無いだろうし！」と私が言うと、「ありがとうございます」と抱きつかれてしまった。

しばらくして、修成はﾋﾛﾔに連絡して、会うことになった。

彼女も同席させたいとのこと。

彼女の前でちゃんと話し合いたいって、そう言うところは、ﾋﾛﾔらしい。

近くのカフェで、待ち合わせた私たちがカフェにつくと、すでに二人は来ていて、手招きした。

私と修成はﾋﾛﾔらの前に座り、テキトーに注文した。