ダンデライオンの揺れる頃
いや。

もしかしたら、自宅のソファに座っていたのかもしれない。

それでも、少女の心は、ここに来ていた。

恋人とすごした、なつかしい場所に。



『ああ。そうか。ぼくは、ここにいたんだ』

消え行く少女の意識の中に、再び、あの声がひびいた。

それは、こころなしか少し大人びていて、なぜだかとてもあたたかかった。



『ぼくは、ここに帰って来たんだ。君に会うために』

あたしに、会うため?



『君に会うために……』
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