夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「……兄上なら先に帰ったぞ」
「えっ?……あ、そ……そう」
そんな私の様子を察したように、アラン様が教えてくれた。
マオさんは先に帰った。
その言葉に残念な気もしたが、道端でこんなにカッカッした自分を見られなかった事に一安心の気持ちの方が大きかった私は安堵のため息をついた。
しかし、それも束の間。
またもやアラン様の言葉が私に意地悪をする。
「ミネア嬢の所へ行ったんだ」
「!……え?」
「今夜はおそらく帰らないんじゃないかな。ミネア嬢お気に入りのホテルで会うと言っていた。
夜に二人きりの密室、しかも婚約者。する事など決まっているだろう」
「ッ……」
一言一言が、私の心にグサグサと突き刺さる。
考えたくもないし、想像したくもないのに……。
俯いて溢れそうな涙を堪えている私の傍らで、そんな私を見たアラン様がハッと口を押さえて自らの失言を心の中で嘆いていた事など気付く訳はなかった。
私がアラン様《この人》の優しさに気付くのは、もう少し後の事……。