夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「!……はい」
「失礼致します。お客様の洗濯物が出来ましたのでお持ちしました」
起き上がり返事をすると、そう言って部屋に入って来たのはこの別荘の使用人さん。その手には、綺麗に洗濯され畳まれた昨夜僕が着ていた服があった。
祖父の屋敷を出てから着替えていなかった僕は、ここで服を借りて自分の服を洗濯をしてもらっていたのだ。
「お世話をお掛けしました、ありがとうございます。
……あ、すぐに着替えてこの服はお返しした方がよろしいですか?」
歩み寄って自分の服を受け取りながら、僕は今着ているワインレッドのセーターについて尋ねた。
すると、以前の僕の事《ヴァロンの事》を知らない新人の使用人さんは、悪気もなく素直に答えてしまう。
「今着ていらっしゃる服のご返却は、いつでも大丈夫です。
そちらはアカリ様の前のご主人様の物でして、今はもう使用しておりませんから」
「っ……」
使用人さんの言葉を聞いた僕は、なんとも言えない衝撃を心に受けて言葉が出なくなった。