夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

料理本を開いて、必要な材料を切るのにも一苦労。
炒めた具材にご飯を加えて、ケチャップで味付けするところまで何とかきたが……。肝心の仕上げ、玉子をふわとろに焼き上げる事が何度やっても出来ない。

食に興味がなかったマオ様が、最近ようやく口にするようになったオムライス。何がなんでも手作りしたくて、普段は高級レストランを予約するところをお父様に頼んでこの一軒家を貸してもらった。

でも、今すごく後悔している。


「……あの人《アカリさん》なら、美味しく作るんでしょうね」

ボールに卵を割りながら、思わず苦笑いが漏れる。

マオ様ーー。記憶を失くす前の彼の元妻アカリさん。生まれも教養も、自分の方が色んな面で勝っていると思うのに、その存在は私を不安にさせた。
資料によると家事全般、特に料理が得意。オムライスに興味を持たせたのも、彼女だと聞いた。
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