夢の言葉と約束の翼（中）【夢の言葉続編⑥】

ーーううん、それだけじゃない。
自分の方が圧倒的に不利な立場なのに、アカリさんは真っ直ぐにわたくしに向かってきたわ。
傍にいるわたくしよりも、ずっとマオ様を信頼しているかのように……。


「わたくしだって、大好きなんだからッ……」

この三年間、ずっとずっと傍にいた。
精神が不安定でパニックを起こした時も、辛いリハビリでストレスが溜まって子供のように癇癪《かんしゃく》を起こした彼も、ずっとずっと見てきた。
ただ微笑ってほしくて、傍にいたの。


「今更、絶対に誰にも渡さないわ」

口でそう呟きながらも、頭の中にはある言葉が浮かんでいた。
それは、以前ヴァロンに言われた言葉。

『俺に何かあったらさ、コレを頼む。な？預かっててくれ』

……。

「貴方は、もうヴァロンじゃないの……ッ」

首を横に振って、昔の彼を振り払う。
三年前。手術を受ける前の彼を、わたくしは封印して今だけを見つめる事にするのだった。
だってわたくしには、マオ様以外誰も心を許せる人なんていないんだものーー……。