花咲く雪に君思ふ
「何かすっかりお邪魔しちゃったわね。そろそろ帰らないと」

「そうだな。送ってくから、一緒に帰るぞ」

外はすっかり真っ暗だ。

「じゃあまたね雪花!と、ついでに桃矢」

「あんた本当に失礼だよね。……一応僕も送ってくよ」

例の辻斬りのことがどうしても引っ掛かり、僕は二人を護衛することにした。

いや別に、二人が心配なわけじゃないから。

「心配しなくても、俺こう見えて武術は得意だから、ちょっとやそっとじゃやられないぜ?まぁ、独学というか、喧嘩で身につけただけだけど」

「相手が人間ならね」

「……え?」

「ほら、さっさと行くよ。雪花は家から出ないこと」

雪花に家にいるよう念入りに言ってから、僕は二人を送るため家を出る。

けれども、僕は油断していたんだ。

この時僕は、二人よりも、雪花のことをちゃんと見ておくべきだった。


桃矢が誠太郎達を送りに家を出て少し。

「~♪」

鼻歌を歌いながら、縫い物をしていた雪花は、ふと何かの音に手を止める。

「?鈴の音が聞こえる」

リンリンと高い綺麗な音が、どこかから響き渡り、雪花は立ち上がり、縁側へと出た。

そこには何時もの森が広がっているだけで、何かいる気配はない。

(桃矢くんは家から出ちゃ駄目って言ってたし……)

正確には、暫くやたら外に出るなと言われている。

けれども、また何処からか鈴の音が鳴り響き、雪花はその音に呼ばれているような気がした。

(……呼んでるの?……誰が?)

行ってはいけない。

そう分かっているし、桃矢との約束もある。

なのに、鈴の音は段々大きくなり、雪花の頭の中でこだまし続ける。

(……くらくらする)

地面が歪んで見え、思考が遠のく。

「……」

ぼんやりとする頭は、考えることを放棄し、雪花はふらふらとした足取りで、家の戸を開けた。

『クッククク』

真っ暗な森の中で、不気味な笑い声に気付く者は誰もいなかった。

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