妖精の涙【完】
「この件に関しては保留とさせていただく。異論のある者は?」
さすがのアゼル殿も口を閉じた。
きっと諸国のピリピリとした空気を読んだんだろうけど、こっちを睨みつけてくるのは変わらなかった。
だからその目、怖いって。
それからは何事もなく会議は進みお開きになった。
オルドが立ち上がりここから離れようとすると、数国の国王が近寄ってきてオルドに挨拶した。
「前王についてお悔やみ申し上げます…たいへんお世話になりまして」
など、僕たちが抱くイメージとは違う父親を垣間見た気がして複雑な気持ちになった。
今さら知ったところで遅いし、僕たちのイメージは簡単には覆らない。
「特にケイディス殿は前王のかつてのお姿にそっくりですな」
げえ、冗談じゃない。
将来あんな感じの男になるってこと?
いやだ…
「そ、そうですか」
「はい!それはもう!」
そんな自信満々に言わなくても。
「それにしてもアゼル殿の態度はいかんですな。手の付けられない子猫のようで」
子猫!
子猫…?
「そうですなあ。あんなに噛みついてくるとは思っておりませんでしたな」
それには同感だけど、僕たち結構疲れてるんだよね。
アゼル殿が早々に退室したからこんな陰口言えるんだけど、それとこれとは話が別。
朝から出発して2時間馬車に乗って着いたと思ったら支度して挨拶しに回ってってしてたらもう開祭式で…
開祭式の後は2時間休憩できたけど、そんなに休めなかったし。
僕たちをおいてぐちぐちと陰口を言い合う周りのおじさんたちを見て辟易した。
「…もうよろしいか」
痺れを切らしたのかオルドが軽く手を挙げて制した。
それを見てぱったりと会話が止まり、若干変な空気になってしまった。
僕はちょっと気まずかった。
「先ほどの話は聞かなかったことにさせていただく。俺たちはメイガスと対立するためにここに集まったのではない」
オルドが真面目な話をしてる…
いや、いつものことだけどね。
なんかこう…公の場でこうやって話ができていることに対して感じるものがあったわけ。
ぐっと来るものが。
「対等な立場だと証明するためにここにいるんだ」
そう。
精魂祭は追悼と豊穣の祭り。
そこに個人的な感情はいらない。
…だからこそアゼル殿の態度が目立ってしまったんだ。
「失礼する」
何も言えないでいるギャラリーを置いてオルドに続いて退室すると、ドアが閉まる直前に僕の耳に聞こえてしまった。