妖精の涙【完】
"…若造が。"
ああ、やっぱり。
あの場にはまともな人はいなかった。
みんな媚びへつらっていただけで誰1人として僕たちを対等に扱っていた者はいなかった。
むしろ…アゼル殿の方が僕たちを対等に扱っていたのかもしれない。
お互い若造として。
「やりきれないな」
「なあに、オルド。もう弱音?」
「いや…」
弱音じゃない。
怒ってるんだ。
ふざけて肩に腕を乗せると若干体温が熱かった。
「ポーガス殿」
「はい」
「俺に教えてくれ」
ポーガス殿はあまりオルドのことをよく思っていない、と僕は感じている。
評議会の中でもかなり上の階級で、オルドが生まれたときの会議にも出席していた。
評議会は満場一致でオルドを第1王子から退けることに賛成したと聞いている。
つまり、ポーガス殿は古い考えの持ち主かもしれないんだ。
ギーヴと僕たちを引き合わせたのもこの人の策略だし…聞いてる限りギーヴはあまりポーガス殿をよく思っていない。
厳格な人だって言ってた。
僕たちも今日になってやっとまともに顔を合わせたぐらいだし、何を考えているかわからない人だ。
「何をでございましょう」
「陛下がここ5年よりも前は何をしていたのかを」
そうか。
確かに資料にまとめたけど、それは過去5年間だけのデータだ。
それよりも前のことは資料で見たけど、読んだに過ぎない。
父上のそばで仕えた彼なら文字以上のことを知っている。
これまで目を背けてきたことにたった今、現在進行形で直面しているんだ。
「すでに資料をお読みでしょう」
「ああ、読んだ。しかしそこに書かれていないこともあるんだろう?」
「ええ、ございます」
「それを教えてほしい」
「それは命令でしょうか?」
うわあ、頭硬い。
苦手だなあこういう人。
とか言う僕も聞きたいと思ってる。
さっきの話を聞いていてイメージとのギャップがあって混乱してるから。
「命令?お願いしているんだが」
「…左様でございますか。わかりました、お教えしましょう」
僕らよりも前を歩いていたポーガス殿が振り向いた。
「…陛下は国王には向いておられないお方でございました」
あえて陛下、と言うところからして慕っているのがよく伝わってきた。
ここではなんだから、と部屋に戻り僕がお茶を準備してそれぞれ椅子に座った。
堅苦しい正装を脱ぎラフな恰好になってみると、ポーガス殿は1周り小さくなったような気がした。