いじわるな藍川くんの愛が足りない
「初日なんだから、愛想よくするのが当然だろ?」
「そうじゃなくて。わたしへの態度と違いすぎるって言ってるの」
あまりに違いすぎるよ。
みんなにばらしてやりたい。
でも、そんなことしない。
だってもう、この人と関わりたくないから。
「あんたに今さら愛想よくしたって、仕方ないだろ?」
...それもそうっちゃそうかもしれないけど。
というか、自覚してるんだ。
「これで全部の案内終わったから。じゃっ」
わたしは彼に背を向けた。
喋りすぎて喉が渇いた。
はやく家に帰りたい。
これ以上ふたりでいるなんて、もう堪えられないーー
「間宮」
名前を呼ばれ、無視することはできず、わたしは振り向かざるおえなかった。
「ありがとな」
って。
今さら愛想よくしたって、もう遅いよ。
藍川くんが性格わるいこと、わたし、もう分かってるんだから。
わたしは小さく小さくうなずいて、また歩き始めた。
“ありがとな”
「っ...」
あんな笑顔、ちっともかっこよくなんてないんだから。