いじわるな藍川くんの愛が足りない


「行くわけないんじゃなかったっけ?」


ドリンクバーのボタンを押してポトポトと流れるウーロン茶をグラス8分までためていく。


“楽しい”その感情だけで終われたらいいのに、

わざわざ隣にドリンクバーをつぎにきた彼のせいで、わたしは“楽しい”の気持ちだけにはなれなくなる。


空のグラスをおいたその長い指は、コーラのボタンをピッと押した。


「舞の付き添い」


「ふうん」


彼は興味の無さそうな返事をする。

興味がないなら聞いてこなければいいのに。


「あ。そういえば、赤木がアンタのこと可愛いって言ってたよ。よかったね?」


まるでクラスの女子に向けるみたいな笑顔。


うさんくさすぎる。


でも彼の言うことがほんとなら、素直にうれしい。

赤木くんとは話したことないのに。


「藍川くんこそモテモテでさぞ気分いいでしょーね」


「嫉妬してんの?」


「なっ、してない!!」


なんでわたしが嫉妬しなくちゃいけないの!!


「いちいちムキになるとこがおもしれぇよな」


「~ッ!」


...完全に遊ばれてる。


絶対次からこの人がいるカラオケになんて来ないっ!!


わたしはそう心に誓った。

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