いじわるな藍川くんの愛が足りない


わたしのほうが早くドリンクをついだはずなのに、彼の方が早く部屋に向かった。


同じタイミングに部屋に戻るのが嫌で、

わたしはその場で少しとどまった。


みんなはまだ2時間くらいいるんだろうな。

舞にはわるいけど、わたしはあと30分くらいしたら帰ろうかな。


お似合いだし、舞と松本くん、うまくいくといいな。


“赤木がアンタのこと可愛いって”

赤木くんのことは、最初に気になっていただけで、今はなんとも思わない。


だけど、そんなこと思われていると知ったら、嬉しいけど少しだけ恥ずかしい。


わたし、単純すぎる。


赤木くんのこと...少しだけ気にしてみようかな...


そんなことを考えながら部屋に向かっていると。


「わっ」

バシャッ


......やってしまった。


曲がり角を曲がるとそこには男の人が二人いて、

手前を歩いていた男の人の黒いTシャツに...ウーロン茶で染みを作ってしまった。


「っすみません...!!」


慌てて頭を下げて謝る。


「うわ、最悪」


大学生くらいの男の人はものすごく嫌そうに染みを見つめた。


「すみませんでした...」


謝ることしかできずにただ頭を下げる。


まだウーロン茶でよかった。


それに黒いTシャツだから染みが残ることはないだろう。


それだけが救いだ。

< 37 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop