いじわるな藍川くんの愛が足りない
わたしのほうが早くドリンクをついだはずなのに、彼の方が早く部屋に向かった。
同じタイミングに部屋に戻るのが嫌で、
わたしはその場で少しとどまった。
みんなはまだ2時間くらいいるんだろうな。
舞にはわるいけど、わたしはあと30分くらいしたら帰ろうかな。
お似合いだし、舞と松本くん、うまくいくといいな。
“赤木がアンタのこと可愛いって”
赤木くんのことは、最初に気になっていただけで、今はなんとも思わない。
だけど、そんなこと思われていると知ったら、嬉しいけど少しだけ恥ずかしい。
わたし、単純すぎる。
赤木くんのこと...少しだけ気にしてみようかな...
そんなことを考えながら部屋に向かっていると。
「わっ」
バシャッ
......やってしまった。
曲がり角を曲がるとそこには男の人が二人いて、
手前を歩いていた男の人の黒いTシャツに...ウーロン茶で染みを作ってしまった。
「っすみません...!!」
慌てて頭を下げて謝る。
「うわ、最悪」
大学生くらいの男の人はものすごく嫌そうに染みを見つめた。
「すみませんでした...」
謝ることしかできずにただ頭を下げる。
まだウーロン茶でよかった。
それに黒いTシャツだから染みが残ることはないだろう。
それだけが救いだ。