いじわるな藍川くんの愛が足りない
「これ、どーしてくれんの?」
そんなことを言われるとは正直思っていなかった。
だから動揺してしまう。
「えっと、クリーニング代を...」
どうするって言われたらそれくらいしか思いつかない。
「君、高校生?」
「は、はい」
「可愛いねー、じゃあさ、おわびに一緒に歌ってよ」
「え...」
「俺らの部屋そこだから」
そう言って肩に腕を回された。
一瞬にして近くなる距離。
「あの、クリーニング代払いますから...!」
部屋に連れ込まれるんだ。
嫌。嫌だ。怖い。
振り払うけど、男の人の力になんてかなうわけなくて。
「暴れんなって。ただカラオケするだけじゃん?」
「そーそー。歌うだけ」
わざとらしくそんなことを強調してくるから逆に怪しすぎて、恐怖をかきたてられる。
「い、や...!!」
さっきまで大きな声で歌っていたのに、その声が出なくてまるでのどがつまったかのようーー
ーーバシャッ!
............え?
部屋に連れ込まれるその手前。
わたしは...
頭から冷たいなにかをぶっかけられた。