冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「はい、先生。
アイシャドーを入れるから、目を閉じててね。
ついでにリップも塗っちゃうから、口もね。」

メイド服で座る俺に、向かいから笑いながら指示を出す彼女。

何が悲しくて

仮装してキスを待つような顔で、彼女と向き合わないといけない…………。

今どきの女子高生の、手慣れたメイクに感心しながら

なるべく落ち込む事を、考えないようにする。

「先生~。
リップは、ピンクとオレンジ………どっちが良いですかぁ~?」

絶対、わざとからかっているとしか思えない会話。

「どっちでも………!!」

いくら不機嫌に答えても、クスクス笑いは収まらない。

あぁ~。

なんとかウインクとセリフは、阻止出来たけど…………

メイク担当は、変わらなかった。

あまり嫌がるのも、彼女に失礼だし………

周りに変に勘ぐられても、困るから………受け入れた。

ただこの前、教師としてでなく……一人の男としてなんて言ったから

余計に恥ずかしい。

「は~い、出来ましたよ!
先生~可愛い!!
写メ撮っても良いですか??
私だけのナイショにするんで。流出させませんから。」と

ニッコリ笑って、スマホを持ってきた。

ちょっと………勘弁してよぅ~

流出させるなんて思わないけど……彼女の携帯に残る写真が女装って。

………って言っても、今から外に出たら………沢山の人に撮られるんだろうし。

「良いですよ。どうぞ。」

俺の返事に…………

横に来て……パシャ。

「ツーショットは、私だけですからね!」と

彼女の可愛いさに、笑うしかない。
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