冷たい指切り  ~窓越しの思い~
取り残された俺と伊藤さん。

「先生、冷たい蜂蜜レモンですよ。
これ、今朝お姉ちゃんに頼んで作ってもらったんです。
疲れがとれるから、飲んで下さいね。
私の特製って言いたいんですけど……お料理は苦手で………。」

「ハハッ。伊藤さんは、本当に正直ですね。
別に、私が作ったって言っても分からないのに。」

「だって~先生にはバレちゃうかもしれないでしょう?」

彼女の返事に

自分の家のキッチンに立つ………彼女を想像してドキッとした。

「えっ?あっ……えっ…………。」

「だって、家庭科の成績表……先生も見るでしょう?」

「あぁ~そっち?」

「そっちって??」

「いえいえ、何でもないです。
それより、美味しいですね。
お姉ちゃんにお礼を言っておいて下さいね。
でも、伊藤さんが気づかってくれたから……飲めたんですからね。
それに、お水と蜂蜜レモンの割合が調度良いですよ。
お料理も、少し練習したら大丈夫かもしれないですよ!」

俺の言葉に

「先生って、本当に私を喜ばせてくれる天才ですね!
こんなにおだてられたら、お料理も出来る気がします。
お姉ちゃんに習ってみようかなぁ~
上手に出来たら………食べて下さいね!」

彼女の軽口に、将来が浮かぶ。

俺…………大丈夫か??

「いつかチャンスがあったら、食べさせて下さいね。」
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