冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「失礼します。」

部活終わりの17時、彼女は職員室にやって来た。

他の先生にアピールするように、書類を持ち

「クラス委員と場所取りの打ち合わせに行って来ます。」と

報告して、準備室に向かう。

他のクラスに情報が漏れないように、準備室を使うことは

どのクラスもやっていることだから、報告だけしたら安心なのだ。

これで、3・4日は誤魔化すことが出来る。

それまでに、書類を作って彼女の相談を引き出さないといけない。

準備室に着くと、取りあえず書類から片づける。

「先生、今回ウチのクラスは和風喫茶なので……着物を着ます。
着付けや移動を考えると、1階の茶道室近くの教室が借りたいと言えば
1階を申請出来ると思うのですが。」と

どのクラスも、人が入って来やすい1階を狙っている。

食べ物を扱う店が多いから、それを理由には許可が下りにくい。

その為、付属の何かをつけて………◯◯喫茶として売り込む。

ウチは和風喫茶で着物を売りにするようだ。

「だったら、茶室で御茶を振る舞いたいと言って……茶室も一緒に借りると
もっと、特別感が出ていいんじゃないか?」

俺の案に飛びつく彼女。

「それ!!良いです。
借りるにも、お客さん集めにも良いアイデアです。
年配の方はもちろん、卒業生も懐かしく思うし
保護者にも、日頃の成果を見てもらえて……みんなに喜ばれます!」

どうやら、直ぐに決まりそうだ。

「早く、書類を書いて提出しましょう!」

焦る彼女に

「別に、早い順に決まる訳じゃないから………ゆっくり提出しよう。
決まってないと大義名分があるから………堂々とこの部屋に来れるしね。
まだ提出しない方が便利だよ。」と、悪い知恵を授ける。

「ところで…………」



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