愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
私と桐島さんの間には、八メートルほどの距離があり、遠くの彼をポカンとして見つめてしまった。


桐島さんが、フランス語を話している。外国の人みたい……。


そんな感想を心の中で呟いた私は、その直後におかしなことを言ったとハッとした。

日本国籍を持っていても、彼の生まれ育ちはベルギーなのだから、あちらの国の言語を話すのは当然のことである。

それはわかっていたはずなのに、最近では桐島さんを家族のように身近に感じていたためか、私の理解できない言語で話す彼に違和感を覚えたのだ。

それと同時に、なぜか寂しい気持ちも湧き上がり、着ているブラウスの胸元をぎゅっと握りしめた。


桐島さんは言った通りに、「邪魔したね」とすぐに出ていこうとしている。

ベルギー社から来た女性も、私たちにニッコリと微笑みかけてから、背を向けた。


自分の席に座ったまま、ふたりを見送る私は、小声で「あっ」と驚きの声をあげ、心臓を大きく波打たせた。


ドアを出たところで、桐島さんが女性の腰に腕を回したのだ。

次はこっちだと、誘導するように。
< 106 / 258 >

この作品をシェア

pagetop