愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
掃除の手を止めて、「桐島さん、行ってらっしゃい」と声をかければ、彼は「行ってきます」と瞳を細める。

それから、ふとなにかに気づいたような顔をして、「有紀ちゃん、じっとしていて」と私の頭に手を伸ばした。


私の黒髪は肩下までの長さで、まとめて捻り上げ、シンプルなヘアクリップで留めている。

そっと伸ばされた彼の手が、まとめ髪のてっぺんをサッと掠めるように触れて、遠のいた。

目を瞬かせてじっとしている私の前に、軽く握った右拳を差し出した彼は、ゆっくりと手を開く。

すると、モンシロチョウが手のひらにいて、すぐにヒラヒラと青空へ飛び立った。


目を丸くした私が、「頭に止まっていたんですね。気づかなかったです。ありがとうございます」と払ってくれたお礼を言えば、好意的な笑みを向けてくれる。


「有紀ちゃんを花と勘違いしたのかな。君は姿も心も、とても美しいから」


こういう時、どういう顔をすればいいの……。

鼓動が大きく跳ねて、恥ずかしさに頬が熱くなる。

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