愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
きっと、私が社員であることを伏せた方が、私たちが友人感覚で楽しく交流できると考えたのではないだろうか。

もっともエマさんとしては、友人ではなく家政婦だと思い込んでいたようだけど……。


後片付けは自分がやるから帰っていいというようなことを言い、エマさんは私の背を押すようにして台所から出ていかせようとする。

「あの、違うんです!」と声を大きくしたが、彼女のスマホはまな板の横に置かれていて、私の言葉を通訳してくれない。

あれよあれよという間に、私は玄関まで押していかれ、コート掛けに吊るしていた薄手のベージュのコートと、通勤用のショルダーバッグを持たされて、「オツカレサマデス」と片言の日本語で言われた。


「お、お疲れ様でした……」


人の良さそうな笑顔のエマさんに見送られて外に出ると、すぐに玄関の引き戸は閉められる。

空を仰ぎ見れば、小さな満月が薄雲を被り、寂しげに輝いていた。


どうしよう、追い出されちゃった……。


戸惑いと焦りは少しの間だけで、すぐにこれでよかったと思い直す。
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