愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
繁華街を抜けて、私たちは今、明かりの乏しい裏通りを歩いている。

紫陽花荘は、すぐ目の前だ。

無言で玄関前にたどり着くと、鍵もかけずに飛び出したらしく、桐島さんが玄関の引き戸をガラリと開けた。

そこでやっと、掴んでいた私の手首を放してくれた。


家を出て一時間も経たずに連れ帰られた私は、先に入っていく彼の背を見ながら、玄関先に立ち尽くす。

こうなってしまえばもう、今夜は外泊すると駄々をこねて困らせる気はないけれど、つらい夜を過ごさねばならないことは確実で、足がすくんでしまう。


私にはわからないフランス語で、桐島さんとエマさんが楽しげに語らう声を聞きたくない……。

エマさんの肩に触れたり、腰に腕を回す桐島さんの姿を見たくない……。

ふたりが抱き合って眠る夜に、同じ屋根の下にいたくない……。


口には出せない想いが、悲鳴のように胸の中に響く。

心が痛くて、コートの胸元をぎゅっと掴んで耐えていた。


この気持ちは、やはり嫉妬なのだろう。

妹のような立場に満足し、頼れる兄ができた気分で幸せに思っていたはずなのに、今はそれが私を苦しめている。

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